夫婦岩の伝説
☆☆ DATA(データー) ☆☆
向かって左が♀ 高さ23.1m 右が♂ 高さ22.6m
流紋岩質の凝灰岩で火山の噴出による海底の火山活動の堆積物。
紀元前1400年前の新第3期中新世頃に形成されたと考えられます。
☆☆ 伝 説(でんせつ) ☆☆ ※太文字は用語の解説があります。
話は「古事記」に記載してある、島造りの世界までさかのぼります。
伊弉諾尊と伊弉冉尊が国土や神を生む行で、淡路島→四国→隠岐島→九州→伊伎島→津島→
佐渡ヶ島→本州など14の島々と35人の神々を誕生(出産)させたとありますが、地元に残る言い伝えや
古文書によりますと高天原にいる天つ神に島々と神々を生むよう指示を受けた夫・イザナギノミコトと妻・イ
ザナミノミコトではありますが、妻が七番目の佐渡ヶ島を産み終えた頃、疲れ果てた妻の姿を夫はかわいそ
うに思い、妻から毛髪と唾液を貰い、自身の血潮と混ぜ合わせ、自分らの分身(後の夫婦岩)と猫(後の
猫岩)を創り、高天原から目の届きにくい佐渡ヶ島の西側に隠し、猫を神々の見張り役にし、残りの島々と
神々を分身より誕生させ、佐渡ヶ島で休息をとりながら妻・イザナミノミコトをいたわったとあります。
しかし、分身の「夫婦岩」が火之夜芸速男神を誕生させようとしたある日、見張り役の猫が退屈のせいか
大きなあくびをしてしまいました。そのあくびの声が高天原にも届き、分身のことも天つ神に見つかってしま
いました。怒った神様は、まず神々の見張り役をしていた猫を岩に変え、イザナギ・イザナミノミコトの二人が
乗っている舟を岩に変えました。それを知り、恐れおののいたヒノヤギハヤヲノカミは、脱兎のごとくを光熱を
発しイザナミノミコトの女陰に戻り、再びイザナミノミコトの体内より誕生し、体裁を繕ったのでありました。
そして不運にも、ヒノヤギハヤヲノカミの発した光熱により分身も赤茶色にただれ、またイザナミノミコトの
女陰も例外ではなく、この事が原因でイザナミノミコトは病み臥せり黄泉の国へと退いたとあります。
夫婦岩のある地名を「高瀬」と書いて「タコセ」と読みますが、高は、高天原の高で、この地は高天原と結
ぶ場所であり、高天原へとつづく瀬〈通り道〉がある場所であるといわれております。いっぽう、読み方の
[タ コ セ」のタコは蛸であり、蛸は海の忍者とも言われるように、体の形と色を自在に変えることができ
蛸のように景色を変えられる場所であったと云われております。では、何のために景色を変えなければいけな
かったのか?言い伝えによりますと、高天原の天つ神に見つからないようにとあります。
このことを踏まえ、改めて「夫婦岩」周辺を見てみますと景色を替える途中だったのであろうか色々な色の
岩が点在し、夫婦岩も女岩の割れ目の周りだけが赤茶色くなっており、北側には「猫岩」やイザナギ・
イザナミノミコトが乗ったと云われる「帆かけ岩」もあり、神話の世界も現実味を帯びてきます。
また、二つの大きな岩の付近は、弥生時代の遺跡(浜端洞穴遺跡)があり
この二つの大きな岩にある穴からも、当時の貝殻や骨が出土しています。
いにしえ人も神々の足跡に気づき、この地を選んだのでしょうか。
いつの頃からか、二つの大きな岩は縁結びと安産の神様と崇められ、
「夫婦岩」と呼ばれるようになり現在に至っています。
※ 分身が産んだ島々と神々
分身(夫婦岩)は25人を産んだ(7島18神)と云われております。
1 |
大倭豊秋津(おほやまととよあきづ) |
14 |
大屋毘古神(おほやびこのかみ) |
2 |
吉備児島(きびのこじま) |
15 |
風木津別之忍男神(かざもつわけのおしをのかみ) |
3 |
小豆島(あづきじま) |
16 |
大綿津見神(おほわたつみのかみ) |
4 |
大島(おほしま) |
17 |
速秋津日子神(はやあきつひこのかみ) |
5 |
女島(ひめじま) |
18 |
速秋津比売神(はやあきつひめのかみ) |
6 |
知訶島(ちかしま) |
19 |
志那都比古神(しなつひこのかみ) |
7 |
両児島(ふたごしま) |
20 |
久久能智神(くくのちのかみ) |
8 |
大事忍男神(おほことおしをのかみ) |
21 |
大山津見(おほやまつみのかみ) |
9 |
石土毘古神(いはつちびこのかみ) |
22 |
鹿屋野比売神(かやのひめのかみ) |
10 |
石巣比売神(いはすひめのかみ) |
23 |
鳥之石楠船神(とりのいはくすふねのかみ) |
11 |
大戸日別神(おほとひわけのかみ) |
24 |
大宜都比売神(おほげつひめのかみ) |
12 |
天之吹男神(あめのふきをのかみ) |
25 |
火之夜芸速男神(ひのやぎはやをのかみ) |
13 |
天之吹男神(あめのふきをのかみ) |
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夫婦岩伝説の用語解説
【古事記】こじき
現存する日本最古の歴史書。神話・伝説と多数の歌謡とを含みながら、天皇を中心とする日本の
統一の由来を物語っている。
【伊弉諾尊】いざなぎ‐の‐みこと
日本神話で、天つ神の命を受け伊弉冉尊(イザナミノミコト)と共に初めてわが国土や神を生み
山海・○草木をつかさどった男神。
【伊弉冉尊】いざなみ‐の‐みこと
日本神話で、伊弉諾尊(イザナギノミコト)の配 偶女神 (妻)。火の神を生んだために死に
夫神と別れて黄泉国(ヨミノクニ)に 住むようになる。
【行】くだり
文字などの、縦または横の並び。
【古文書】こ-もん-じょ
古い文書。
【高天原】たかま‐の‐はら
日本神話で、天つ神がいたという天上の国。たかまがはら。
【天つ神】あま‐つ‐かみ
天にいる神。高天原の神。
【血潮】ち-しお
体内を潮のように流れる血。激しい情熱や感情。
【分身】ぶん-しん
のちの夫婦岩のこと。左がイザナミノミコトで右がイザナギノミコト。
【火之夜芸速男神】ひのやぎはやを‐の‐かみ
日本神話で、伊弉諾・伊弉冉二神の子。火をつかさどる神。迦具土神の別名。
【恐れおののく】おそれ-おののく
非常に恐ろしがる。
【脱兎】だっと
逃げて行く兎。転じて、非常に速いもののたとえ。
【光熱】こう-ねつ
強い光と高い熱。
【女陰】じょいん
女性の生殖器。
【体裁を繕う】ていさい-を-つくろ
失敗(しっぱい)などがわからないように、みかけ・ うわべをととのえる。
【病み臥せり】やみ-ふせり
病気(びょうき)になり床(とこ)につくこと。
【黄泉の国】よみ-のくに
死後、魂が行くという所。死者が住むと信じられた国。
【退く】しりぞく
公の職務から引退すること。
【弥生時代】やよい-じだい
縄文時代に続き、紀元前五世紀頃から、紀元後三世紀頃までの約800年間。
大陸・朝鮮の文化の影響で稲作、それに伴う農耕用石器、金属器などがもたらされた。
【遺跡】い-せき
のこされた、むかしの人の生活のあと。
【いにしえ人】いにしえ-びと
むかしの人。
【縁結び】えん-むすび
男女の縁を結ぶこと。(結婚)
【安産】あんざん
苦しまないで出産すること。無事にお産をすること。
【崇める】あがめる
この上ないものとして扱う。尊敬する。敬う。
☆☆ その他の「夫婦岩」にまつわる言い伝え ☆☆
★ 大潮の日に、めおと岩にある洞窟で愛を交じわると子宝に恵まれる。
(最初に男が入り声を出して女の名を呼んでから女が入り、最中に声を発しては、ならない。)
★「めおと岩」に打ち上げられる小石を持ち歩くと、好きな人と結ばれる。